タイトル 5

2005年3月28日 連載
次の日、俺はひたすらクレーマーの対応に追われた。だいたい俺がミスをしたわけじゃない。やったのは俺の先輩の近藤だ。あいつ、仕事できない癖して先輩風をふかせるんだよな。そのくせ今回みたいに自分に都合が悪くなると、すぐ後輩にしっぽをふって仕事を押し付けるんだ。いやなやつだよ。
「坂田君、今回はほんと迷惑かけてすまんね。」
「いいですよ。別に。これも勉強だって思ってますから。」
嫌味。
「そうかい。いやありがとね。まったく向こうもこんなちょっとしたミスでそんなに怒るなってんだ。そう思わない。」
「そうですね。でもしかたないですよ。それより、はやくやっちゃいましょ。」
「がんばるねえ。んじゃ、僕も手伝うよ。」
お前の仕事だろ。
「そうですか、ありがとうございます。とりあえず書類を作り直すんで、資料をいただけませんか。」
「あ、資料ね、はいはい。えーっと、どこやったっけなあ。えーと、えーと。ちょっとまってね。」
おいおい。勘弁してくれ。
 結局資料が見つかるまで二時間かかった。近藤が自分のアパートに置きっぱなしにしていたことを思い出すまで一時間。それをとりに行くので一時間。おかげで今日の仕事は想像以上に長引いた。
 今日は夕食はいいと言っておいたので、帰りにコンビニによって弁当を買うことにした。帰り道にあるコンビニに向かうと、高校生の集団がいた。どうやら、文化祭の準備をしていて、その差し入れを買いにきたらしい。いいな、高校生は。俺ももどれるもんならもどりたいよ。そしたらクレーム処理も近藤の後始末もしなくていいのに。うらやましいよ。まったく。
 弁当を買って家に帰ると、妻はもう寝ていた。でも、夕食の準備はしてあった。今日のメニューはサケのムニエルとポテトサラダだ。ムニエルには手作りのタルタルソースがかかってる。これ作るのけっこうめんどくさいって言ってたな。いらないって言ったのに。わざわざめんどくさいものを。嬉しいけど、あいにく俺が買ってきたのはシャケ弁当だ。かぶっちまった。とりあえずムニエルは冷蔵庫に入れとこう。

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