タイトル6

2005年3月28日 連載
 一週間後、後藤から電話があった。
「もしもし。おー、後藤か、ひさしぶり。元気か。」
後藤は大学時代の同じサークルの仲間だ。地方からやってきた俺と違って、こいつは大学の近くの実家から通っていた。大学を出てからは家業の酒屋をついでいる。
「まあまあだな。お前はどうだ。」
「俺はぼちぼち。で、なんだよ、電話なんて、珍しい。」
「いや、あのさ。お前、伊勢がどこに行ったか知らないか。」
「伊勢。何で急にあいつがでてくるんだ。」
伊勢は後藤と同じ大学時代のサークル仲間。特別仲がいいってわけでもなかったので、今は連絡もとっていない。最後にあったのは2年前のサークルの同窓会だったかな。
「伊勢がどこに行ったかなんて、お前知ってるだろ。夏畑の会社に就職して、そこで今も働いてるはずだろ。もっとも、二年前のことなんで今はどうかしらないけど。」
「そうじゃねえよ。いいか、よくきけ。お前、最近連続行方不明事件が起こってるの知ってるだろ。」
「ああ。最近うちの取引先の人も行方不明になったって聞いた。」
「え、お前のまわりでもおこってるのか。」
「お前のまわりでもってどういうことだよ。お前のまわりでもおきたのかよ。」
「そのとおり。ここまで言えばわかるだろう。」
「へ。」
「バカかお前は。いいか、いうぞ。伊勢が行方不明になったんだ。」
「うそだろ。」
「そんなくだらねえ冗談いわねえよ。今のところ何も手がかりがないらしい。だから、ひょっとして最近の事件とかかわりがあるんじゃないかって話だ。」
「それで俺に電話してきたってか。」
「まあな。とにかく連続行方不明事件と関係なくても、伊勢が行方不明になったことだけは確かなんだ。お前も、何か情報があったら教えてくれ。」
「わかった。でも多分大丈夫だと思うがな。あいつ、けっこうしっかりしてたし。」
「しっかりしてたやつが行方不明になったから余計に心配なんだろ。いいか、何かわかったら教えろよ。」
「わかった。そっちもまたなんかあったら電話くれよ。じゃあな。」
「おう。お前も気をつけろよな。なにがあるかわかんねえぞ。」
「わかったわかった。じゃな。」
伊勢が行方不明か。まさかな。んなことあるわけない。にしても、後藤はいいやつだな。もし俺が行方不明になっても、あいつは同じように俺のことを心配くれるだろうか。なんてな。そんなこと考えたってしょうがねえ。明日もはやいしもう寝よ。

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