タイトル 9

後藤からまた電話があった。
「もしもし。後藤。どうよ、伊勢は見つかったか。」
「いや、ぜんぜんだ。大学があるこの辺に来ている可能性もあるかもと思っていろいろ話を聞いているけど、ぜんぜん手がかりが無いな。お前はどうなんだ。」
「こっちもぜんぜん。あいつがいなくなってどれくらいだっけ。」
「だいたい一ヶ月くらいだ。まったくどうなってるのかさっぱりわかんねえよ。」
「多分大丈夫だって。あいつのことだからどっかで元気にやってるさ。」
「何を根拠に。まあいいか。そうだ。お前、今度の土日、空いてるか。」
「多分空いてるけど、何。」
「今度の土日に、夏畑に行ってみようと思うんだ。伊勢の情報を探しに。もう、星野も一緒にいくことになってる。」
ああ、なるほどね。あんま乗り気しないんだけど。せっかく仕事を片付けて土日はゆっくりしようと思ってたのに。ま、そういうわけにもいかんか。ここで断ったら人でなしだ。
「そうか、わかった。」
「じゃ、六時半に雨森駅集合な。車は俺が出すよ。ホテルの手配もしとく。じゃ、遅れんな。朝早いからな。」
「俺が待ち合わせに遅れたことがあったか。10分前集合がポリシーだ。お前こそ遅れんなよ。」
「当たり前だろ。じゃ、またな。」
「うん。じゃな。」
あーあ、めんどくさいことになっちまったな。伊勢のやつ。いったいどこで何してやがんだ、まったく。