伊勢の会社は、夏畑の市街地にあった。地方都市の一角ってところだ。周りを見てみると、築何年かもわからないような古いたてものの中に、ぽつぽつと新しいのビルが立っていて、それがみょうに違和感がある。人通りはまあまああるが、これは土曜日だからかもしれない。普段はもっと少ないだろう。伊勢の会社は、そんな街の無個性な建物の中にあった。
「すいません。さきほど伊勢さんの剣で電話した五島というものですけど。」
「あ、はい。うけたまっております。じゃ、お二階の応接室のほうへどうぞ。」
「あ、はい、わかりました。」
内装はこぎれいでいい感じだ。応接室でしばらくまっていると、大柄な男が入ってきた。
「やあ、どうも。わたくし、佐野ともうします。伊勢君の課の課長をしております。」
「ああ、どうも、わたしは後藤といいます。で、隣にいるのが坂田、その隣が星野です。」
「よろしくお願いします。」
二人そろってあいさつした。
「そちらの方々は、伊勢君のご学友ということで。」
「はい。大学の同級生で同じサークル仲間です。」
「で、伊勢君をわざわざこんな遠くまで探しにこれれたそうで。ご苦労様です。」
「いえ、友達として当然のことです。」
後藤がいいきった。すげえ、こんなくさい台詞俺にはとてもいえねえ。
「素晴らしいですね。いや、こちらとしても、伊勢君が行方不明になったのは、かなりの痛手なんですよ。伊勢君がやっていた仕事はとまるし、マスコミがしょっちゅうやってきては取材させろといってくる。こちらは忙しいのに、そんなのに対応しきれないんですよ。警察はほとんどお手上げ状態ですし。ですから、あなたたちのような協力者は嬉しいのです。あと、伊勢君の住所でしたよね。こちらに地図がありますのでどうぞ。」
「どうも、ありがとうございます。では、質問よろしいですか。伊勢が、行方不明になる前に、何か変わったことはありませんでしたか。」
「いや、特に無いですね。彼はまじめな社員でしたから、普段どおり仕事をこなしていたという印象です。」
「そうですか、普段どおりに。」
「ええ、彼はよく働いてくれまして、残業が続いても、ハードな仕事が続いても、愚痴一つこぼさずにやってくれました。」
あいかわらず真面目だったんだな。大学のころも、こいつは真面目に講義にでてたもんな。俺はまあそれなりだったけど。
「そうですか。では、疲れている様子はありませんでしたか。」
星野が聞いた。
「うーん、なにぶん彼はあまり感情を表に出さない人だったので、なんともいえませんね。」
おいおい、部下の様子をしっかりみるのが上司の仕事だろ。
「では、何も文句を言わずに仕事をこなす伊勢に、あなたがたは仕事を押し付けていたということはありませんか。」
後藤、それはちょっと言いすぎだ。
「いえ、そんなことは無いと思います。」
「でも、あいつが毎日ハードな仕事をしていたことは事実なんでしょ。気づかないうちに押し付けていたってことがあるかもしれないじゃないですか。」
「おい、後藤。」
「後藤君。」
「あんたらがあいつを道具のように扱ったから、あいつがもう嫌になってどっかいっちまってもおかしくねえだろーが。」
「すいません、ちょっともう帰ります。ありがとうございました。」
「おいこら、離せ、おい。」
後藤を二人がかりで押さえつけながら、俺たちは逃げるように伊勢の会社をあとにした。
「すいません。さきほど伊勢さんの剣で電話した五島というものですけど。」
「あ、はい。うけたまっております。じゃ、お二階の応接室のほうへどうぞ。」
「あ、はい、わかりました。」
内装はこぎれいでいい感じだ。応接室でしばらくまっていると、大柄な男が入ってきた。
「やあ、どうも。わたくし、佐野ともうします。伊勢君の課の課長をしております。」
「ああ、どうも、わたしは後藤といいます。で、隣にいるのが坂田、その隣が星野です。」
「よろしくお願いします。」
二人そろってあいさつした。
「そちらの方々は、伊勢君のご学友ということで。」
「はい。大学の同級生で同じサークル仲間です。」
「で、伊勢君をわざわざこんな遠くまで探しにこれれたそうで。ご苦労様です。」
「いえ、友達として当然のことです。」
後藤がいいきった。すげえ、こんなくさい台詞俺にはとてもいえねえ。
「素晴らしいですね。いや、こちらとしても、伊勢君が行方不明になったのは、かなりの痛手なんですよ。伊勢君がやっていた仕事はとまるし、マスコミがしょっちゅうやってきては取材させろといってくる。こちらは忙しいのに、そんなのに対応しきれないんですよ。警察はほとんどお手上げ状態ですし。ですから、あなたたちのような協力者は嬉しいのです。あと、伊勢君の住所でしたよね。こちらに地図がありますのでどうぞ。」
「どうも、ありがとうございます。では、質問よろしいですか。伊勢が、行方不明になる前に、何か変わったことはありませんでしたか。」
「いや、特に無いですね。彼はまじめな社員でしたから、普段どおり仕事をこなしていたという印象です。」
「そうですか、普段どおりに。」
「ええ、彼はよく働いてくれまして、残業が続いても、ハードな仕事が続いても、愚痴一つこぼさずにやってくれました。」
あいかわらず真面目だったんだな。大学のころも、こいつは真面目に講義にでてたもんな。俺はまあそれなりだったけど。
「そうですか。では、疲れている様子はありませんでしたか。」
星野が聞いた。
「うーん、なにぶん彼はあまり感情を表に出さない人だったので、なんともいえませんね。」
おいおい、部下の様子をしっかりみるのが上司の仕事だろ。
「では、何も文句を言わずに仕事をこなす伊勢に、あなたがたは仕事を押し付けていたということはありませんか。」
後藤、それはちょっと言いすぎだ。
「いえ、そんなことは無いと思います。」
「でも、あいつが毎日ハードな仕事をしていたことは事実なんでしょ。気づかないうちに押し付けていたってことがあるかもしれないじゃないですか。」
「おい、後藤。」
「後藤君。」
「あんたらがあいつを道具のように扱ったから、あいつがもう嫌になってどっかいっちまってもおかしくねえだろーが。」
「すいません、ちょっともう帰ります。ありがとうございました。」
「おいこら、離せ、おい。」
後藤を二人がかりで押さえつけながら、俺たちは逃げるように伊勢の会社をあとにした。
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