伊勢のアパートは、市街地から少し離れたところにあった。まわりはほとんど田んぼだ。地方都市ってのは市街地をはずれたらどこもこんなもんだ。たぶん、田んぼをつぶして立てたんだろう。親が死んで農業をやる人がいなくなったやつが不動産屋に土地を売ったんだろうな。こうやって日本の農業は衰退していくんだろう。それはそれとして、アパート自体はなかなかいい建物だ。伊勢はまじめに仕事をしていたみたいだから、給料はわりといいほうだったんだろう。ちょっとうらやましい。
「ついたけど、一体何するんだよ。」
「とりあえず、近所の人の話をきいてみようと思ってる。」
「近所っていっても、この辺田んぼばっかりだから近所も何もないぜ。向こうに民家があるけど、百メートル以上は離れてるし。」
「とりあえず、ここのアパートの人に話を聞いてみようよ。」
というわけで、俺たちは伊勢のアパートの人に話を聞いてみることにした。伊勢の部屋は2階の右から2番目の部屋だった。とりあえず、隣の人からだ。後藤がチャイムを押した。しばらくすると、30代くらいの女性が出てきた。後藤が質問をする。
「すいません。あの、少しお話を聞かせてもらえませんか。」
「え、あの、何の御用ですか。」
「俺たち、あなたの隣の部屋に住んでる、伊勢君の友人なんです。1ヶ月ほど前、伊勢君が行方不明になって、心配でさがしにきたんです。」
「ああ、そのことですか。わたし、お隣のことよく知らないので。伊勢さん、でしたっけ。」
「そうなんですか。でも、なんでもいいです。何か手がかりになりそうなことはありませんか。」
「そういわれてもねえ。」
「なら、伊勢君が、行方不明になる前、何か変わったことはありませんか。お隣のドアの音で、いつ帰ってきたかとかはわかるでしょう。」
星野が聞いた。
「うーん、あ、そういえば、その、伊勢さんは、だいたいいつも11時過ぎに帰ってきていたわね。わたし、それをタイマー替わりにしていたわ。お隣が帰ってくると、いつももうねなきゃって思ってた。」
「そうですか。それは、昔からずっとですか。」
「そうね。私はここに2年前引っ越してきたんだけど、そのころからずっとだと思うわよ。」
多分その前からそのサイクルは続いていたんだろう。2年前といえばちょうど同窓会があったころだな。あのときもあいつはこの生活サイクルを繰り返していたのか。ちょっと疲れていたように見えたのはそのせいかもな。
「他にはなにかありませんか。」
「そうねえ、まじめそうな方だったけど。あ、あまり人が尋ねてくるってことはなかったみたいね。このアパートの壁は厚いけど、それでも伊勢さんじゃ内包のお隣さんからは、たまに友達との話し声が聞こえたわ。でも、伊勢さんのほうはほとんど何も無かったわね。それこそ、ドアの音くらいよ。あ、そういえば、朝部屋を出る時間もいつも一緒だったわ。朝7時15分ぴったしに部屋を出て行くのよ。わたしはいつもその音を聞いて、急がなきゃと思ってたわ。」
「なるほど。ありがとうございました。参考にさせていただきます。」
こんなもんだろう。俺は何も聞いていないが、この人からはこれだけ聞けたら十分だ。
「いえいえ、こんなことくらいしか教えられなくてすみません。じゃ、がんばってください。わたしも、お隣さんが行方不明なんて嫌ですから。」
「わかりました。がんばってさがします。」
とはいっても2日で何が出来るか。まあ、この2人はまたこっちに来てでもやる気かもしれないけど。
「ついたけど、一体何するんだよ。」
「とりあえず、近所の人の話をきいてみようと思ってる。」
「近所っていっても、この辺田んぼばっかりだから近所も何もないぜ。向こうに民家があるけど、百メートル以上は離れてるし。」
「とりあえず、ここのアパートの人に話を聞いてみようよ。」
というわけで、俺たちは伊勢のアパートの人に話を聞いてみることにした。伊勢の部屋は2階の右から2番目の部屋だった。とりあえず、隣の人からだ。後藤がチャイムを押した。しばらくすると、30代くらいの女性が出てきた。後藤が質問をする。
「すいません。あの、少しお話を聞かせてもらえませんか。」
「え、あの、何の御用ですか。」
「俺たち、あなたの隣の部屋に住んでる、伊勢君の友人なんです。1ヶ月ほど前、伊勢君が行方不明になって、心配でさがしにきたんです。」
「ああ、そのことですか。わたし、お隣のことよく知らないので。伊勢さん、でしたっけ。」
「そうなんですか。でも、なんでもいいです。何か手がかりになりそうなことはありませんか。」
「そういわれてもねえ。」
「なら、伊勢君が、行方不明になる前、何か変わったことはありませんか。お隣のドアの音で、いつ帰ってきたかとかはわかるでしょう。」
星野が聞いた。
「うーん、あ、そういえば、その、伊勢さんは、だいたいいつも11時過ぎに帰ってきていたわね。わたし、それをタイマー替わりにしていたわ。お隣が帰ってくると、いつももうねなきゃって思ってた。」
「そうですか。それは、昔からずっとですか。」
「そうね。私はここに2年前引っ越してきたんだけど、そのころからずっとだと思うわよ。」
多分その前からそのサイクルは続いていたんだろう。2年前といえばちょうど同窓会があったころだな。あのときもあいつはこの生活サイクルを繰り返していたのか。ちょっと疲れていたように見えたのはそのせいかもな。
「他にはなにかありませんか。」
「そうねえ、まじめそうな方だったけど。あ、あまり人が尋ねてくるってことはなかったみたいね。このアパートの壁は厚いけど、それでも伊勢さんじゃ内包のお隣さんからは、たまに友達との話し声が聞こえたわ。でも、伊勢さんのほうはほとんど何も無かったわね。それこそ、ドアの音くらいよ。あ、そういえば、朝部屋を出る時間もいつも一緒だったわ。朝7時15分ぴったしに部屋を出て行くのよ。わたしはいつもその音を聞いて、急がなきゃと思ってたわ。」
「なるほど。ありがとうございました。参考にさせていただきます。」
こんなもんだろう。俺は何も聞いていないが、この人からはこれだけ聞けたら十分だ。
「いえいえ、こんなことくらいしか教えられなくてすみません。じゃ、がんばってください。わたしも、お隣さんが行方不明なんて嫌ですから。」
「わかりました。がんばってさがします。」
とはいっても2日で何が出来るか。まあ、この2人はまたこっちに来てでもやる気かもしれないけど。
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