「ねえ、ねえってば。」
おっと、ぼーっとしてたみたいだ。
「ん、何だ。」
「何か変だよ、あの自販機。」
「まあ、確かにあんな田んぼの真ん中に自販機があるなんてちょっと変だけどな。まあ、農家の人が農作業の合間に何か飲みたくなったら使うんだろ、多分。」
「そうじゃなくってさ。さっきから僕たち、歩いてるけど、あの自販機にぜんぜん近づいていないんだよ。」
「何言ってんだ。そんなもん気のせいに決まってんだろ。」
「気のせいだと思うなら後ろを見てみなよ。」
「後ろー。」
後ろにはさっきまで俺たちがいたホテルがある。ホテルが…、あれ、ホテルが遠い。100メーターくらい離れている。前を見てみる。自販機は相変わらず遠くにある。
「あれ、いや、でも気のせいだろ。目の錯覚で自販機が意外と遠いってことに気づかなかっただけだって。」
「でもさ、でもさ、あーもう、もう戻ろうよ。やっぱちょっとおかしいって。」
「あー、もうわかった、わかった。戻ればいいんだろ。ジュースはあきらめるよ。」
「よかった。じゃあ戻ろう。」
何をおおげさな。そういやこいつ、オカルトが苦手だったっけ。しゃあない、もどるか。もど、あれ。いつまでたってもホテルに近づかない。いや、それどころかホテルが遠ざかっている気さえする。
「あれ、おかしいな。なんだ、どうなってるんだ。」
「あ、あああ。やっぱおかしいよ、これ。こんなこと、あるわけない。」
後ろを見る。自販機の位置は変わらない。
「お、落ち着けよ、星野。こんなことあるわけない。ホテルのほうに進めば、いつかはホテルに着くさ。たいした距離じゃないじゃないか。走ろうぜ。」
「う、うん。それっ。」
俺たちは走った。それでもやっぱりホテルは近づかない。落ち着け、これは夢だ、夢。いすでうとうとしているうちにいつの間にか寝ちまったんだ。いてっ。ちくしょうやっぱりゆめじゃない。一体どうすれば。そうだ。
「星野、止まれー。」
「はあ、はあ、どうしたの。坂田君。」
「やはりこの現象はおかしい。前に行っても後ろに行っても、俺たちは行きたいところに辿りつけない。」
「そうだね。なんだかわかんないけど。」
「そこがポイントなんだ。前に行っても後ろにいっても辿りつかない。なら、左右ならどうだ。田んぼの中に入ることになるけど、ひょっとしたら脱出できるかもしれない。」
「う、でも、そんなのただの推測じゃない。余計変なことになったらどうすんの。」
「でも、このまま前に進み続けても多分何も変わらないぞ。だったら、新しい方法を試してみる必要はあるんじゃないか。」
「わ、わかったよ。じゃ、右か左、どっちにいく。」
「一応左側には明かりが見える。あの明かりを目指していけば、ひょっとしたら抜け出せるんじゃないか。」
「わかった。左だね。田んぼに入るのは気が進まないけど、仕方ないか。」
「じゃ、行くぞ、それっ。」
俺たちは田んぼに脚を踏み入れた。あれ、でも、あれ、何だ。
「あ、足が引っ張られる。」
「あああー、失敗だー。」
俺たちの脚は、何かの力で田んぼの中に引っ張られている。抵抗しようとしても、なぜか力が入らない。俺たちの体はどんどん田んぼに沈んでいく。
「うわあー、ほ、星野、大丈夫かー。」
「だ、大丈夫じゃ、ない。」
「すまん星野、俺がジュースを買いにいかなかったらこんなことには。」
「も、もういいよ。それについてきたのは僕だし。」
「それでもすま…。」
俺の体は田んぼに飲み込まれた。
おっと、ぼーっとしてたみたいだ。
「ん、何だ。」
「何か変だよ、あの自販機。」
「まあ、確かにあんな田んぼの真ん中に自販機があるなんてちょっと変だけどな。まあ、農家の人が農作業の合間に何か飲みたくなったら使うんだろ、多分。」
「そうじゃなくってさ。さっきから僕たち、歩いてるけど、あの自販機にぜんぜん近づいていないんだよ。」
「何言ってんだ。そんなもん気のせいに決まってんだろ。」
「気のせいだと思うなら後ろを見てみなよ。」
「後ろー。」
後ろにはさっきまで俺たちがいたホテルがある。ホテルが…、あれ、ホテルが遠い。100メーターくらい離れている。前を見てみる。自販機は相変わらず遠くにある。
「あれ、いや、でも気のせいだろ。目の錯覚で自販機が意外と遠いってことに気づかなかっただけだって。」
「でもさ、でもさ、あーもう、もう戻ろうよ。やっぱちょっとおかしいって。」
「あー、もうわかった、わかった。戻ればいいんだろ。ジュースはあきらめるよ。」
「よかった。じゃあ戻ろう。」
何をおおげさな。そういやこいつ、オカルトが苦手だったっけ。しゃあない、もどるか。もど、あれ。いつまでたってもホテルに近づかない。いや、それどころかホテルが遠ざかっている気さえする。
「あれ、おかしいな。なんだ、どうなってるんだ。」
「あ、あああ。やっぱおかしいよ、これ。こんなこと、あるわけない。」
後ろを見る。自販機の位置は変わらない。
「お、落ち着けよ、星野。こんなことあるわけない。ホテルのほうに進めば、いつかはホテルに着くさ。たいした距離じゃないじゃないか。走ろうぜ。」
「う、うん。それっ。」
俺たちは走った。それでもやっぱりホテルは近づかない。落ち着け、これは夢だ、夢。いすでうとうとしているうちにいつの間にか寝ちまったんだ。いてっ。ちくしょうやっぱりゆめじゃない。一体どうすれば。そうだ。
「星野、止まれー。」
「はあ、はあ、どうしたの。坂田君。」
「やはりこの現象はおかしい。前に行っても後ろに行っても、俺たちは行きたいところに辿りつけない。」
「そうだね。なんだかわかんないけど。」
「そこがポイントなんだ。前に行っても後ろにいっても辿りつかない。なら、左右ならどうだ。田んぼの中に入ることになるけど、ひょっとしたら脱出できるかもしれない。」
「う、でも、そんなのただの推測じゃない。余計変なことになったらどうすんの。」
「でも、このまま前に進み続けても多分何も変わらないぞ。だったら、新しい方法を試してみる必要はあるんじゃないか。」
「わ、わかったよ。じゃ、右か左、どっちにいく。」
「一応左側には明かりが見える。あの明かりを目指していけば、ひょっとしたら抜け出せるんじゃないか。」
「わかった。左だね。田んぼに入るのは気が進まないけど、仕方ないか。」
「じゃ、行くぞ、それっ。」
俺たちは田んぼに脚を踏み入れた。あれ、でも、あれ、何だ。
「あ、足が引っ張られる。」
「あああー、失敗だー。」
俺たちの脚は、何かの力で田んぼの中に引っ張られている。抵抗しようとしても、なぜか力が入らない。俺たちの体はどんどん田んぼに沈んでいく。
「うわあー、ほ、星野、大丈夫かー。」
「だ、大丈夫じゃ、ない。」
「すまん星野、俺がジュースを買いにいかなかったらこんなことには。」
「も、もういいよ。それについてきたのは僕だし。」
「それでもすま…。」
俺の体は田んぼに飲み込まれた。
コメント