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2005年4月20日 エッセイ
僕の世代が親の世代から言われてきたことの一つに、
お前たちがうらやましいってのがある。
私たちのときは何も無かった。
あってもお金が無かったので、ほとんど手に入らなかった。
お前たちにはいろいろなものがあるし、
それを手に入れることも出来る。
お前たちはそれでもまだたりないとわがままばかりいう。
こんなに与えてあげているのに。何が不満なのだ、と。

なるほど、何にも間違っちゃいない。
確かに親の世代と比べると、僕の世代はかなり裕福で、
いろんな便利なもの、面白いものがあって、
大抵のものは手に入る。はっきりいって、金持ちだ。
(そうじゃない人もいるけど。)

でも、こういわれ続けることによって、
僕は文句を言うことを押さえつけられてしまった。
僕には文句を言う資格は無い。
こんなに満たされた生活をしているくせに、
よりよい生活を求めようなんて贅沢だ。

まわりで文句を言えている人がうらやましいとか思っていた。
文句を言う資格があるのは、大人か、お金の無い人。
そんなふうに思っていた。
豊かさを持たない人にしか、文句を言う資格はないんだと。

僕は文句を言っても全ては幼稚なわがままで終わってしまうと思っていた。

「何で勉強せなあかんの。何でいい大学にいかんとあかんの。」
「ばか、そんなん当たり前や。将来のためにきまっとるやろ。
お前は大学に行くお金があるだけ幸せなんやぞ。」

「友達がぜんぜんできへん。」
「しるかそんなもん。普通できるやろ。あんたから会話せんからあかんのや。」

「日本の学校のシステムはおかしい。あんなこと教えてもほとんどのやつには意味ない。
それに、あんたもほとんど忘れとるやろ。」
「確かに忘れてる。役に立ったかもわからん。でも、それは義務や。それぐらいやれ。」

はっきりいってぜんぜん納得はできないけど、
それでもその大人の理論は全て今の世の中の当たり前となっている。
そこには明確な根拠はないし、何の解決策も無い。
それでも、同世代の他の人たちが、これを受け入れていて、
自分自身もそれを不本意ながらも受け入れざるを得なかった。

こんなことを続けていて、僕ははっきりいって大学に入るまで、
何一つ世の中のことが見えていなかった。(今でも見えているのかは疑問だけど)

世の中はどんどん悪くなってた。僕の想像を超えるくらいに。
もう解決方法が無いんじゃないかってくらいに。

親たちが僕たちにうらやましがっていたのは、
つまりは物があるイコール豊かである、
という金銭的価値観だ。
確かにそれは、今までの僕にはあった。

でも、親世代にあって、僕たちに無いものがある。
それは、希望と、戦後日本経済の発展の流れにのれたことだ。
例え今は貧乏でも、経済発展は順調だし、
自分の給料も上がっていっている。
このままいけぼ、いつか裕福になれるかもしれないという希望。
そしてそれは、現実になった。

経済が貧しい国は、最新の技術を導入しやすく、
かつ安い人件費で物が生産できるため、
生真面目な日本人気質も手伝った、
安くて品質のよい日本製品が世界中で人気が出た。
物が売れることで、日本人も豊かになっていき、
どんどん経済発展していった。
その流れに上手く乗れた世代が、僕の親の世代である。つまり、50代付近。

(余談だが、松本紳助で島田紳助が、俺たちの世代が一番いい世代といっていたが、そのとおりである。
30代後半から40代前半の世代は日本で一番ラッキーな世代だ。
戦後の貧困を味わうこともほとんどなく、日本経済の発展の流れに上手く乗れて、
バブル後の不況でも、そのまえの大量採用時代に正社員にはなれているし、今では地位も上がっている。
IT化の波にもついていけるだけのまだ若い頭もある。)

僕には、経済発展の未来も見えないし、希望も見えない。
ただあるのは将来への不安だけである。
今日よりも明日がもっと悪い世界なのだ。
精神的な豊かさが存在していないのだ。

いくら僕がこんなことを考えても、僕には力が無さ過ぎる。
片田舎のへタレ大学生にできるのは、
こんなことを書いて誰かに伝えることくらいだ。
そもそもこんな日本全体の悩み以前に、
就職活動という壁にぶつかって力をえるどころか、
力を失われつつあるのだ。どれだけ警笛を鳴らしたって誰も気付いてくれないんだ。

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