ISBN:4480058184 新書 山田 昌弘 筑摩書房 1999/10 ¥714

大学の課題で読んだ。ほとんど教授の受け売りだが、書いとく。

はっきりいって、この本一冊でパラサイトシングルを定義するのは危険だ。
確かに、この本は、パラサイトシングルという言葉を定義し生み出した本である。
この本がなければパラサイトシングルが問題視されることはなかっただろう。

そこまでは間違いない。問題はそこから先である。
この本に書かれている内容は古いことだらけなのだ。
このことは、この本を出した後、作者自身が気づいて、
続編の『パラサイト社会のゆくえ』で、作者自身が訂正している。

『パラサイト・シングルの時代』で、
作者は、パラサイトシングルは金持ちで消費をぜいたく品に
まわすから、経済がうまく回らないのだと書いた。

しかし、『パラサイト社会のゆくえ』では、
今のパラサイトシングルは貧しくなっているとある。

この2冊の間には、5年間の時差があるから、
それくらいの変化はあるとも思うかもしれない。

しかし、作者がパラサイトシングルを発見したのは、
この本が出る二年前の1997年である。
しかし、『パラサイト社会のゆくえ』には、1998年にはもうこの本で書かれたような、
リッチなパラサイトシングルはいなくなっていて、
リッチなパラサイトシングルの本当のピークは1990年、
つまり、バブル経済の時期の話だったとある。
こんな時代なら、そりゃあぜいたく品の消費は多いだろう。
そこから不況が訪れどんどんリッチなパラサイトグルは少なくなった。
作者が発見したときには、もうほとんどリッチなパラサイトシングルの時代は終わっていて、
この本を刊行したころには完全に時代遅れの理論になってしまっていたのだ。
しかし、それが注目を浴びてしまった。

作者は、『パラサイト社会のゆくえ』によって、
『パラサイトシングルの時代』の訂正を行った。
この本を出すことは私のやらないといけないことだとあったが、そのとおりである。

リッチなパラサイトシングルは過去のものとなった。
今のパラサイトシングルは、リッチではないパラサイトシングルである。
特に、いつかは結婚すると考えていた人たちに、
結婚をしなかったことの弊害が出てきているのだ。
詳しくは『パラサイト社会のゆくえ』を読んでもらったほうが
いい。

作者の言葉を借りるなら、『社会学はなまもの』だ。
日々流れていく社会の一部分をとらえたとしても、
いつかは変わっていく。そして時代遅れになる。
そのことを頭に入れた上で、世の中を見ないといけないと思う。

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