大丈夫だ。

この日記が書き終わったら電話する。
僕は内定を蹴り飛ばす。中途半端じゃもうだめだ。
心配は無いはずだ。所詮2週間前の状態に戻るだけだ。
就職活動を再開するだけだ。
でも怖い。はっきり行って怖い。
ようやくつかみかけてたなんとかなるかもしれない
未来を手放すわけだから。
僕の全ての情けなさよ、勇気に変われ。
全ての暗い感情よ、希望に変われ。
電話一本で済む話なんだ。済む話なんだ。
暗いシミュレートしかできないけど、いけるはずだ。
僕は自分自身と戦うんだ。
僕は常に僕の味方だ。
いかないといけない。もっとすばらしい未来を見つけないといけない。
あー、もう！速く電話しろよグズ！
その電話はおもちゃか？
お前の人生はゲームか？
いままで社会のごみだったんだ。
ちょっとくらい役に立って見せろ、自分。
戦え。戦え。誰も支えちゃくれない。
お前はお前なんだよ。誰からも期待されない、
誰からも信頼されない、誰からも評価されない、
同情さえもまともに受け入れられないひねくれたクズだろ。
だから電話するんだよ。逃げなんかじゃない。
これは戦いなんだ。成功を勝ち取るための。
栄光を勝ち取るための。
みんな戦っているんだ。お前だけ逃げるなんて出来ないんだ。
死ぬのはいやだろ？痛いのはいやだろ？
こんな毎日が続くのもいやだろ？
だったらやれよ。さっさとやれよ。
これ書き出してからもう10分もたってるぞ。
いい加減にしろ。かけろ。かけろ。3分ですむ。いや、2分でいける。
カップめんより短いのに。
なんなんだよもう。はやくやれよ。俺だった苦しいんだよ。
自分の首を絞めているんだからな。
世界一かっこいい人間を目指してるんだろ？
何もしないやつが一番かっこ悪いんだ。
知ってんだろ。俺が知ってるんだから。
だからもう、な。頼むから電話してくれ。
そして内定を断って、心機一転就職活動を再開してくれ。
やれるだろ。いままでもっと苦しいことがたくさんあっただろ。
孤独にはなれてるはずだろ。むしろそれがお前の力だろ。
弱いんだよ。ちがう。強いんだよ。
ほんとに何考えてんだお前は。
お前の人生だぞ。軽々と捨てるんじゃねえ。
世界はこんなに病んでいるんだ。
それを変えるんだろ。そのために力が必要なんだろ。
限界なんか無いんだ。信じろ。俺を信じろ。
大丈夫だ。お前は大丈夫だ。きっと。きっと。きっと。
何の才能も無い。正直、何の才能も無いよ。
でもな、お前は強いんだ。ほんと、そこだけは覚えといてくれ。
ほら、ほら、ほら。あ、やっと携帯を開いたな。20分かかったぜ。
やっと少し動いてくれたな。あとちょっとだ。
電話番号を入れて少し待って、
用件を伝えるだけじゃないか。
なに？もう内定承諾書を出してしまったからだあ？
後輩のためにも断っちゃ悪いだあ？
ふざけんなカス。この偽善者。
そんなこと考えてる場合か。
気持ちはわかる。俺だからな。
だからこそ残酷にならないといけないんだ。
人を殺すわけじゃないんだから。それくらいは仕方が無いんだ。
みんな覚悟して生きているんだ。
何が起ころうとみんな受け入れているんだ。
お前がその発生源になったって、きっと許してくれる。
大丈夫だ。お前は悪くない。戦える。勇者だ。
よし、電話番号を入力した。できるじゃないか。
あとちょっとだ。そうだ、笑え。ごまかせ。
自分を捨てろ。演技をしろ。仮面をかぶれ。
できるだろ。演技の才能が無いのも知ってる。
だってどんな演技を見てもいいも悪いも何もわからないんだからな。
そんなやつがする演技だ。へたくそだろうさ。
だからなんだ。やるべきときにはやれ。やれ。やれ。
怖いのか。俺も怖いよ。未来がなくなりそうでめちゃくちゃ怖い。
くそ。だから、だからこそほら、もうわかるだろ？
あとちょっとなんだ。あとはその発信ボタンをピッと押すだけだ。
そしたら体が勝手に動いてくれるから。
俺が動かしてやるから。大丈夫だ。俺はお前が大好きだ。
大嫌いだけど大好きだ。だから大丈夫だ。
お前の今まで全てを見てきたんだから。そんな俺がいうんだから
間違いなんてない。死ぬよりはましだろ。
まだ死ぬほど生きてもいないくせに死ぬなんていうな。
覚悟を決めろ。覚悟だ。ぬるま湯から抜け出す覚悟だ。
全て失敗した。だから新しい可能性にかける。
なにか間違ってるか？全て正しいとはいえないだろうけど、
それでも今はこれは正しいんだ。お前にとって限定で。
さあ、さあ。普段滅多に使わない電話を使え。
泣くな。笑え。死ぬな、生きろ。速く手をキーボードから離せ。
いいか。いくぞ。もうちょっとだ。押せ。押せー！